はるログ

見習いカウンセラーはるの教室

ビル・カニンガムという人

ビル・カニンガム
この世で最もファッションを楽しみ、生きる糧にしていたのではないかと思える人物。

彼を初めて知ったのは「ビル・カニンガム&ニューヨーク」というドキュメンタリー映画だった。

徹底した仕事ぶりと人柄に、わたしは一瞬で彼に魅了されてしまった。
自由を貫くため、無報酬で仕事をし続け、
パーティでは水一杯も口にせず、写真を撮り続ける。
タダで着飾る有名人には興味がないといい、
通りを歩くスタイルを持った一般人を嬉々とした表情でフィルムに収める。
食べ物には興味がなく、ファッションを食べてその日をしのいでいたという。

映画の中でのビルの屈託のない笑顔、
仕事に向き合うときの難しい注文や真剣な表情、時に厳しい態度。
すべてが私の心をつかんで離さなかった。

うわべだけで人を判断せず、一瞬で本質を見抜く。

お金や名声など、この人には一切関係がない。
"ファッション"-純粋にただそれだけを求めて日々を生きる。

2016年、87歳で亡くなったと聞いたとき、
会ったこともないが遠く日本からさみしい思いを抱いたことを思い出す。

そのビル本人が執筆した原稿がまとめられた本が、
死後出版されたことを知り、さっそく読んでみた。

『ファッション・クライミング ビル・カニンガム』 朝日新聞出版

そこには映画の中でも多くを語らなかったビルの人生が詰まっていた。

自身の育ってきた環境、ファッションに魅了された経緯、
帽子デザイナーとして歩み出したきっかけ、徴兵された際の経験など、
ビル・カニンガムという人物が出来上がった背景を細かく知ることができた。

人一倍のファッションへの興味、行動力、センス、ユーモア、発想、人格。
到底まねできるものではないけれど、確実に勉強になるものはある。

ここまで貪欲にファッションだけを追い求め、そして自分の糧にする。
映画の中でビルが言っていた、
「わたしは働いていません。好きなことをするだけです。仕事ではないのです」
「美を追い求める者は、必ずや美を見出す」
この言葉たちが本を読むことで本質になる。

実に有意義な読書の時間になった。

この本は間違いなく私のバイブルになることだろう。